現在、MX互換スイッチ用として多種多様なキーキャップが販売されています。メーカーも違えば形も違い、価格も様々ですが、いったい相場はどれくらいなんだろう?というお話をしたいと思います。
キーキャップをビジネス面から大別するとデザイナーものとそれ以外に分けることが出来ます。
この場合のデザイナーとは、プロファイル、カラーウェイ(色の組み合わせ)、レイアウト、ノベルティなどを決める人を指します。一般に、キーキャップの形状そのものから設計することはまずありません。
デザイナーものの場合、多くはGB(グループバイ)の販売形態を取ります。つまり、必要とされる分だけを少量生産するわけです。価格は大量生産品よりも割高になりますが、少量生産を在庫販売するよりは、販売側のリスクが小さくなる分、安価に出来ます。
非デザイナーものの場合、キーキャップメーカー内部のデザイナーかもしくはメーカーの下請けデザイナーが匿名でデザインします。生産数は比較的大きいか、もしくは様々な事情からコストが抑えられる量を狙って生産されていると考えられます。こちらはGBではなく、通常の在庫販売となります。価格的には圧倒的に安いです。
キーボードのコミュニティで特に人気のGMK(ドイツ)やシグネチャープラスティクス(アメリカ)のSAなどは、デザイナーものとしてGBが行われます。近年では、EPBTなどの中国メーカーのキーキャップでもデザイナー主導のGBが行われるようになってきました。
相場はどのくらいなの?
キーボードのホビーに足を踏み入れてみて驚くのがキーキャップの価格でしょう。安価なメンブレンのキーボードなら千円代から買えるというのに、この世界では樹脂の欠片が数万円もするわけです。ポチることに誰しもはじめは戸惑ったはずです。これって払っていい価格なの?と。そこで参考までに人気のデザイナーものの相場を載せておきます。
GMK Laser Cyberdeck 138キー 140ドル(GB時140ドル) 1.01ドル/キー
SP SA Laser Cyberdeck2 116キー プレオーダー150ドル 1.29ドル/キー
おおよそ1キー1ドル程度ですね。
中国メーカーになるともう少し価格が下がります。
EPBT Traveling 126キー GB85ドル 0.67ドル/キー
MDA Ember 104キー 79.99ドル 0.76ドル/キー
MDAはインハウスのデザイナーのものですので、外部デザイナーものとは比べられないかもしれません。
ちなみに、MDA Future Suzuriは191キーで135ドル。0.70ドル/キーです。
なぜコスト高のデザイナーものを買うのか
非デザイナーものの安価なセットならアマゾンなどで3000円程度から見つかります。多くはOEMプロファイルかXDAです。それらのキーキャップが悪いわけではありませんが、コミュニティでは高価格なデザイナーものの人気が高いです。
その理由は、むろん優れたデザインにあることは間違いないでしょう。誰しも自分の好みにぴったりなものを求めるものです。
特殊レイアウトに対応したキット内容という場合もあるかもしれません。MDA ORHO VoIDはまさにそうした観点から作られたセットでした。
もうひとつの大きな要素はレアリティです。GB品は欲しくてもその時に参加していなければ買えないものです。そして、自分がGBに参加したことで生産が実現したという事実も、満足感に繋がるものではないかと思います(最近では、もはやGBする必要もないのにマーケティング的観点から行われるGBもありますが)。
最後に、背景に流れるストーリー性の存在についてもあげておきたいと思います。デザイナーもののキーキャップに付き物のテーマと呼ばれるものがそれに当たります。キーキャップをキャンバスに見立ててデザイナーが表現しようとした世界に共感出来るかどうか。この世界観好きだな、かわいいな、かっこいいな、と思えるものを手元に置いて入力装置に使うことは、社会心理学や消費行動論の言う拡張自己に当たるわけで、つまるところ高コストをかけても学術的な裏付けのある行為として認められているので安心してポチりましょう。