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自キクラスターにもこだわりのテスターを

この記事は、キーボード#1 Advent Calendar 2023 の18日目。昨日はあのcorneの作者foostanさんによる「Corne Keyboardのバージョンアップについて」でした。

さてさて。御存知の通り自作キーボード界隈は盛況で、さまざまな才能をお持ちの方たちが熱心にいろんなキーボードを開発されているので、人と違ったことをやりたいと常々思っている自分としては手を出せるスリリングなところがあんまりないなとちょっとばかり開発意欲が減退していたりします。

同人ではありませんが、つい最近も中国メーカーによる販売価格数千円の金属筐体キーボードキットを入手してみたりして、この値段でこれ出せるのかと改めて驚かされたり。とはいえ、開発経過をお見せしているものとか、まだ構想中のものなんかもありますので、来年こそは頒布までもっていくつもりはなくはないです。ええ、たぶんきっとおそらく。

そんなこんなで今年はキーボードそのものの話ではなく、キーボードを作るのに欠かせないツールのひとつであるテスターについてお話したいと思います。

あなたのテスター、本当にそれでいいんですか?

自作キーボードとは、そもそも電子工作です。わかりますか? 電子工作ですよ。
そして電子工作につきものといえばテスターです。
なにはなくてもテスター。
これは譲れません。

え? テスター持ってない? 速攻ポチりましょう。

え? テスターなんて1000円以下のでいいでしょって? うーん、駄目ではないですが…。
それじゃ伺います。

あなたのテスター、それでいいんですか?

あなたの何万円もするキーボードを組み立てるときに使うテスター、本当にそれでいいんですか?

測定器とは命綱であり相棒である

テスターとは電気・電子工作の世界のもっとも基本にしてもっとも有用な測定器です。技術者たちは、送り出す製品、保守する設備の信頼性を裏打ちする相棒のような存在として重要視し、ときにその測定値に命を預けるほどです。これなしに回路を触ったり、設計・開発をすることはできません。

5V以下がメインとなる自作キーボードの電子工作ではそもそもリスクの高い作業はほとんど発生しませんし、しかも設計者ではなくユーザーとしての立場で考えた場合、昨今のキットはスイッチさえソケット対応になっていたりして、もはやはんだ付け作業さえ存在しないものも少なくありませんから、本当にテスター要るの?という疑問が生じても不思議はありません。それでも、いざ不具合に出くわした際にはまず手に取るのがテスターということになるでしょう。

実際、SMKiJ(Self-Made Keyboards in Japan)のトラブル相談室では、組み立て中のキットのトラブルを持ちかけてくる相談者のための問診票に「テスターを持っていますか?」という項目があります。一部の入力が不通になれば回路の導通チェックが必要になりますし、全体が動かなければ電圧を見たくなります。LEDが光らないなんてときにもやはり電圧チェックからスタートすべきです。テスターはキーボードの組み立てのトラブルシューティングに欠かせないツールと言っていいと思います。ソフトウェアエンジニアであれば日頃からテストの重要性はおわかりでしょうが、電子工作における最も身近なテストツール、デバッグツールがテスターです。ほら、やっぱり重要でしょう?

自作キーボードに必要なテスターとは

テスターの重要性がわかったところで、自作キーボード的にどんなテスターがあればいいの?という話題に移りましょう。おおよそ必要な機能は次のとおり。

  • 直流電圧計測
  • ダイオード計測
  • 導通チェック

たったこれだけ。
こんな機能、いま売ってるほとんどのデジタルテスターに搭載されてます。
要するに何を買っても問題ないといえば問題ないんです。予算が厳しい場合は1000円も持って秋月に出かければなにかしら買えると思います。

しかしです。キーボードにこだわるあなたのことです。キーボードと同じようにテスターにだってこだわりたいじゃありませんか。

計測器沼の深淵を覗いてみよう

こだわりって言ったって電圧測ったりするのなんてみんないっしょっしょ。
うん、まあそうですけど、それを言ったら1000円以下で買えるキーボードだって立派に入力の機能を満たしてるという点ではあなたのそのカスタムキーボードといっしょです。

こだわりとは、見えていなかったものが見えてきたときに気になって仕方がなくなるもの。

ではその「見えなかったもの」を見せてもらおうじゃありませんかとYouTubeの大海原に出てみるわけです。すると世界には計測器沼があることがわかります。YouTubeには様々なおじさま方がテスターについて熱く語っていますが、なかでも筆者のお気に入りはオーストラ リアの強キャラYouTuberのDaveさん。

上記はFluke 101という、デジタルマルチメーター界のトップブランドによる中国生産のアフォーダブルでポータブルな製品のレビューです。

ちょっぴり口が悪くて乱暴ですけど、一般的な計測テストはもちろん、ACレンジでのAC1200Vの高(過)負荷やオームレンジでの1200V負荷なんかも行ってしっかりテストを行い、分解の上で回路・基板設計、物理設計を検証していきます。提灯系の人ではないので悪い点もしっかり指摘。この甲高い声が癖になります。製品評価については動画をどうぞ。

もうちょっと本格的なデジタルマルチメーターも見てみましょうか。こちらは落ち着いた声のMarcoさん。

 

登場するメーターは、エンジニアたちが全幅の信頼を寄せるFluke 87V、その対抗馬として登場した台湾メーカー(いまはヨーロッパメインかも)によるBrymen BM839、そしてビンテージとなるSolartron 7081電圧計。87Vの圧倒的なデザインにまず心惹かれてしまいますがBrymenも悪くありません。販売店名も出てくる動画ですのでそのあたりは差し引いた方がいいかもとは思いますが、このメーカー、計測器界隈ではなかなかに評判となったところでして、動画でも確認できる通り造りはFluke並と言って良さそう。このくらいのしっかりしたメーターを常備しておきたいものです。

でもデカくないです?

しっかりしたメーターはデカいです。自宅の工作スペースであれば問題はないものの、持ち運ぶ用途にはあまり向きません。そもそも5桁機要りますかという話もあります。というわけで、今度はポータブルに振り切ってみましょう。

 

ふたたびDaveさんの登場。ズラリ並べられたポケットメーターを次々にぶった切るレビューです。中でも高評価を受けていたのが我が国が誇る三和電気計器のPM3。厚さ8.5mmというまさにポケッタブルなこのテスター、自キ界隈でも何人かの方が愛用されているのを目撃しています。キーボード組み立て用としては過不足のない製品だと思います。

で、何を使ってるの?

と、ここまで読めば当然Fluke使ってる?となりますが、そんなブランドもん持ってません。Flukeのデザイン好きなのでもちろん欲しくはあります。とくに101は持ち運び用としてほどよい。なによりかわいいです。でも買ってません(まだ)。

現在、現役で使ってるテスターは写真のとおりです。

使い分けとしては、リファレンス用かつ商用電圧用にはBrymen BM869s、電子工作にガンガン使うのはUni-T UT61E、デスクでぱっと使うのはAneng AN8008という感じ。こうして並べるとなんだかプアマンズFlukeみたいなラインナップですね。

BM869sは50000カウント(条件付きでもう1桁アップ)の高性能機。高速計測が可能で、たとえば導通テストなら60Hzだって可能。機能充実、安全性高く、付属のプローブも素晴らしい。

UT61Eは22000カウントの機種でサイズもそこそこに収まっており、質感も悪くないです。なにより導通テストの反応がよいのが気持ちいい。テストリードはいまいちなので後で紹介する別のものに変えています。

Aneng AN8008はFluke 101によく似た小型筐体ながら、電流計測、DCのmvレンジ計測などかなり多機能でなおかつ激安(みんなだいすきAliで2000円前後)。造りは値段なりですし、そもそも1000V CAT IIとか測定カテゴリーを信じてはいけないと(個人的には)考えて、商用電源にぶつけるようなことはしません。安全面については例の測定器沼の方々が動画上げてますのでチェックしてみてください。

ちなみにプローブ、いわゆるテスター棒も実はピンキリ。
UT61EにつけているプローブはProbe Masterのものです。コードのしなやかさ、接点部の造り、導通テスト時の反応など、良質なプローブがもたらす体験の良し悪しは意外と大きいです。

テスターにもこだわってみよう

高価なカスタムキーボードが優れた打鍵感や打鍵音をもたらしてくれるように、テスターも高級になるほど操作感が良質になります。たとえばダイヤルの回す際の感触だったり、グリップだったり、導通テストの遅延具合だったり、測定対象の変化に対するメーター表示の追随具合だったり。加えて、テスターには安全面にも大きな差があります。こだわる大義名分がある、ということですね。

ここ最近ではテスターよりもオシロに話題が集まりがちですけど、やはり基本はテスター。
あなたもぜひぴったり来る相棒を探してみてはいかがでしょう。
ただしくれぐれも沼にハマりませんように。

 ※この記事はAleth42 rev2で書きました(はやく出せ自分)

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